2018年05月01日

山根一仁、プログラムを語る!

2018年5月3日(木・祝)13:30開演 ミューザ川崎シンフォニーホール
「新星の煌めき―俊英デュオ」
山根一仁&北村朋幹 デュオ・リサイタル

日本音楽界の期待を一身に受ける俊英2名、いよいよ公演迫る!
今回のために練りに練ったプログラムを
山根一仁が大いに語ってくれました。
公演当日が待ちきれない!

トリ2016.08.05-287.jpg

−今回、曲目はどのようにして選ばれたのでしょうか。

(山根)演奏会のプログラムは何かしらのコンセプト、関連性を持たせるようにしています。前半のシュニトケ、ショスタコーヴィチは、ソヴィエトの作曲家という共通点がもちろんありますが、2人ともバッハをとても尊敬していた作曲家で、それぞれの曲の至る所にバッハの影響を受けていると思われる箇所があります。僕は宇宙の果てを感じさせるようなバッハの音楽が大好きで、それに近づこうとする、あるいはリスペクトしているこの2人の作曲家も素晴らしい。シュニトケは日本音楽コンクール(注:中学3年時に優勝したコンクール)の課題曲として弾いて以来ずっとレパートリーとしています。ショスタコーヴィチは昨年はじめて演奏し、本当に素晴らしい曲ですがあまり演奏されないため、もっとみなさんに聞いていただきたいという思い、そして自分の(成長の)ためという思いもあり、組み込みました。


−シュニトケのヴァイオリン・ソナタにはどんなイメージをお持ちでしょうか。

(山根)シュニトケはコンクール時から大好きで、その時はうまく弾きたいという一心でしたが、何度も弾いている内に、更に深みにはまっていきました。この曲は、たとえば皮肉であったり、暴力的なものであったり、そういったものを表現している中で、第3楽章で急に美しく…美しすぎて、逆に不気味なくらいの綺麗さがあったり。
この作品の核はパッサカリアと題されたこの第3楽章だと思います。ここで生み出される透明感は、異世界を浮遊しているような、そんな感覚さえ感じさせます。そしてその透明感は、楽章の終わりに向けて狂気へと変化していく…。この楽章ではBACH(シ♭−ラ−ド−シ)の音をハ長調に移行したCHDCis(ド−シ−レ−ド♯)が度々出てきますが(注:楽章冒頭のピアノ等)、ハ長調はまっさらな、まさに宇宙を感じさせる調です。ここに、バッハへの大きなリスペクトが表れています。


−同じソヴィエトを代表する作曲家・ショスタコーヴィチのソナタが前半の2曲目に組まれましたね。

(山根)ショスタコーヴィチのソナタは晩年の頃の作品です。ショスタコーヴィチは当局に対する皮肉を込めた作品を多く残しましたが、この作品はそういった当局からの抑圧の中で書かれたものではなく、もっと達観した…人智を超えたものなのではないかと僕は思います。彼がいろいろな経験を重ねた上で、結局最後は神のもと、そしてバッハのもとへ辿り着く…まるでオルガンのような響きを感じさせてくれる箇所がいくつかあったり、バッハの舞曲のようなところもあったり。素晴らしい曲です。
辛い人生を歩んできた彼ですが、この作品ではその足跡が描かれているのではく、彼自身の今が描かれているのではないかと思います。例えば「革命」交響曲や「レニングラード」交響曲にあるような人間の嫌なところ、権力による抑圧に対する反抗を書きたかったわけではなかったのではないかなと。皮肉を書く必要のない、ストレートに書かれた作品だと感じています。でも例えば、第2楽章は確かに激しいし、人によっては暴力的と受け止める方もいらっしゃるかも知れない。でも僕は、そうではないと思っています。


−そして後半のバッハへとつながる。

(山根)後半のはじめにバッハを組んだのは、もちろん前半の流れを意識したこともあります。バッハの他の曲も大好きですが、この世で一番好きな曲をひとつ挙げるとしたらパルティータ第2番のシャコンヌを選ぶくらい、本当に好きな曲です。


−バッハと言えば今師事されているクリストフ・ポッペン先生も偉大なバッハ演奏者として知られていますね。

(山根)ポッペン先生には、バッハを弾くにあたっての細かいテクニックなども教わりましたが…個性は出るものであって出すものではない、本当に曲を勉強し自然に弾いたときこそ、もっとも個性が出るのだと、そういったことを間接的に教えてくれている気がします。
先日ポッペン先生の前でパルティータ第2番を全曲、弾いたのですが、すべて弾き終わった後に「君がいいと思った通りに弾けば、良くなるよ」と言われたのは嬉しかったですね。一生バッハを勉強していこう、と改めて思いました。
バッハは自分の現在地を確かめられる、重要な作曲家だと思います。バッハが重要だということは当たり前のことですが、本当に好きになって勉強すればするほど、その重要さ、偉大さをより一層感じます。


−ストラヴィンスキーの「イタリア組曲」を選んだのは?

(山根)この作品はピアノの北村くんから「君に合っているのでは」と勧められたのをきっかけに。バレエ音楽「プルチネッラ」をストラヴィンスキーがオーケストラ組曲に編曲し、それをさらに彼自身がヴァイオリンとピアノ版に編曲したものです。この作品は今回はじめて演奏しますので、とても楽しみです。
「イタリア組曲」はイタリアン・バロックのスタイルを踏襲した作品ですので、バッハからのバロックの流れ、さらには前半のソヴィエトの作曲家、というつながりもあり…プログラミングとしては最高のものができたと思っています。

posted by 神奈川芸術協会 at 10:51| 公演情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする